妊娠中、「足がパンパンにむくむ」「靴が履きにくくなった」「夕方になると足首が重い」と感じる方もいるかもしれません。
妊娠中のむくみは、多くの方が経験しやすい身体の変化の1つです。血液量の増加やホルモンの変化、大きくなった子宮による血管の圧迫など、妊娠中ならではの要因が関係することがあります。
一方で、急にむくみが強くなった場合や、片足だけ腫れる場合などは、医療機関への相談が必要なこともあります。
この記事では、妊娠中にむくみが起こりやすい原因と、日常生活でできるケア、相談した方がよい目安について、理学療法士の視点から分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 妊娠中にむくみが起こりやすい原因
- むくみが出やすい部位と時期
- 日常生活でできるむくみケア
- 理学療法士に相談すると確認できること
- 医療機関に相談した方がよいむくみのサイン
まず知っておきたい結論
妊娠中のむくみには、血液量の増加、ホルモンの変化、大きくなった子宮による血管の圧迫、同じ姿勢が続くことなどが関係する場合があります。
多くは妊娠中に起こりやすい身体の変化ですが、すべてを「よくあること」として自己判断するのは避けたいところです。
日常生活では、足を少し高くして休む、横向きで休む、足首を軽く動かす、水分をこまめに摂る、締め付けの少ない衣類を選ぶなどの工夫が役立つことがあります。
ただし、急にむくみが強くなった、片足だけ腫れる、痛みや熱感がある、頭痛や目のチカチカを伴う場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
妊娠中にむくみが起こりやすい原因

妊娠中のむくみは、1つの原因だけで起こるものではありません。妊娠に伴う身体の変化が重なり、足や手に水分がたまりやすくなることがあります。
原因1|妊娠中は血液量が増える
妊娠中は、赤ちゃんへ酸素や栄養を届けるために、母体の血液量が増えます。
血液量が増えると、体の中の水分バランスも変化します。その結果、余分な水分が組織にたまりやすくなり、足首やふくらはぎのむくみとして感じることがあります。
とくに、長時間立っていた日や、同じ姿勢が続いた日の夕方は、下半身に水分がたまりやすくなる場合があります。
原因2|ホルモンの変化で水分がたまりやすくなる
妊娠中は、ホルモンの影響で血管や水分バランスが変化します。
この変化により、血液や水分の流れがゆるやかになり、下半身に水分がたまりやすくなることがあります。
また、妊娠中は疲れやすさや運動量の低下も重なりやすい時期です。体を動かす機会が少なくなると、ふくらはぎの筋肉が使われにくくなり、足のむくみを感じやすくなる場合があります。

原因3|大きくなった子宮が血管を圧迫する
妊娠が進むにつれて子宮が大きくなると、骨盤の中にある血管が圧迫されやすくなります。
とくに、下半身から心臓へ血液を戻す太い血管である下大静脈が圧迫されると、足から心臓へ戻る血液の流れが滞りやすくなります。その結果、足のむくみにつながることがあります。
姿勢や子宮の位置、血管への圧迫のされ方によって、左右差を感じる方もいます。足の血管が浮き出て見える、重だるさや痛みを伴う場合は、かかりつけの医師に相談してみましょう。
原因4|便秘や同じ姿勢が関係することもある
妊娠中は、ホルモンの変化や運動量の低下により、便秘になりやすい方もいます。
便秘やおなかの張りがあると、腹部の圧力が高まり、下半身の血液や水分の流れに影響する場合があります。
また、長時間の立ちっぱなし、座りっぱなしもむくみに関係します。同じ姿勢が続くと、足の筋肉がポンプのようにはたらきにくくなり、足に水分がたまりやすくなることがあります。
妊娠中のむくみが出やすい部位と時期

妊娠中のむくみは、足首やふくらはぎに気づきやすい傾向があります。重力の影響で水分が下半身にたまりやすいためです。
太ももまわりに重だるさを感じる方もいます。太ももの内側には大きな血管が通っているため、血液の流れが滞ると、重さや張りを感じることがあります。
手や指のむくみとして気づく方もいます。朝起きたときに指がこわばる、指輪がきつく感じる場合は、無理につけ続けないようにしましょう。
時期としては、妊娠中期から後期にかけて気になりやすくなる方もいます。長時間同じ姿勢でいた日や、暑い時期には、むくみを感じやすくなる場合があります。
妊娠中のむくみに日常生活でできるケア

妊娠中のむくみは、日常生活の工夫で軽く感じられることがあります。無理のない範囲で取り入れてみましょう。
足を少し高くして休む
横になるときに、足の下にクッションや丸めたタオルを置き、少し高くして休んでみましょう。
高くしすぎる必要はありません。苦しくない範囲で、足が少し楽になる高さを選びます。おなかが張る、息苦しい、腰がつらい場合は、姿勢を変えてください。
横向きで休む
仰向けで長時間休むと、大きくなった子宮が血管を圧迫しやすくなる場合があります。
横向きになると、血管への圧迫が軽くなることがあります。ただし、横向きがつらい場合は、無理に続ける必要はありません。クッションを使いながら、楽な姿勢を探しましょう。
足首を軽く動かす
同じ姿勢が続くと、足の血液や水分の流れが滞りやすくなります。
足首をゆっくり回す、つま先とかかとを交互に上げ下げするなどの軽い運動は、座ったままでも取り入れやすい方法です。
散歩やストレッチも、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。おなかの張りや痛みがある場合は中止してください。

締め付けすぎない衣類を選ぶ
靴下やレギンスの締め付けが強すぎると、血液の流れを妨げることがあります。
着圧ソックスを使う場合は、妊娠中に使用できるものを選び、強すぎる圧や長時間の使用は避けましょう。使用に不安がある場合は、医師や助産師に相談してください。
水分をこまめに摂る
むくみが気になるからといって、水分を控えすぎる必要はありません。
水分が不足すると、体調に影響する場合があります。こまめに少量ずつ、水やノンカフェインのお茶などを摂るようにしましょう。
味の濃い食事が続いていないか見直す
塩分を多く含む食事が続くと、身体が水分をため込みやすくなることがあります。
極端に制限する必要はありませんが、味の濃い食事が続いているときは、汁物や加工食品の量、外食の頻度を少し見直してみるのもよいでしょう。
妊娠中にできる運動については、こちらの記事も参考にしてください。
理学療法士に相談すると何ができる?

理学療法士は、身体の動きや姿勢、日常生活での負担を確認し、その方に合ったケアを考える専門職です。
妊娠中のむくみに対しては、むくみそのものを診断するのではなく、日常生活で取り入れやすい動き方や休み方を一緒に確認できます。
たとえば、次のようなことを確認します。
- 姿勢や歩き方
- ふくらはぎの筋肉が使いやすい足首運動
- 休むときの姿勢
- 骨盤や股関節まわりの負担
- 妊娠週数や体調に合わせたセルフケア
- 医療機関に相談すべきサインの整理
むくみが気になる場合でも、痛みや急な変化があるときは、まず医師に相談することが大切です。
こんなむくみは医療機関に相談を
妊娠中のむくみは起こりやすい変化ですが、注意が必要な場合もあります。
次のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
- 急にむくみが強くなった
- 片足だけ腫れている
- 足の痛み、熱感、赤みがある
- 頭痛がある
- 目がチカチカする、見え方が変わる
- 急な体重増加がある
- 息苦しさや胸の痛みがある
- おなかの張りや強い違和感がある
急なむくみや頭痛、目のチカチカを伴う場合は、妊娠高血圧症候群など、医師の確認が必要な状態が隠れていることがあります。
また、片足だけの腫れに痛み、熱感、赤みを伴う場合は、深部静脈血栓症が関係することがあります。深部静脈血栓症は、脚の深い静脈に血のかたまりができる状態です。気になる症状がある場合は、自己判断せず相談してください。
よくある質問

Q. 妊娠中のむくみはいつから起こりますか?
妊娠中期から後期にかけて気になりやすくなる方もいます。
ただし、むくみの出方には個人差があります。長時間同じ姿勢でいた日や、暑い時期、疲れがたまっているときに感じやすくなる場合があります。
Q. 水分を控えた方がむくみは減りますか?
水分を控えすぎる必要はありません。
水分不足は体調に影響する場合があります。むくみが気になるときも、こまめに少量ずつ水分を摂ることを意識しましょう。
Q. 妊娠中に着圧ソックスを使ってもよいですか?
妊娠中に使用できる着圧ソックスであれば、補助として使える場合があります。
ただし、圧が強すぎるものや長時間の使用は避けましょう。足の痛みやしびれ、皮膚の違和感がある場合は使用を中止し、医師や助産師に相談してください。
Q. 妊娠中のむくみにマッサージをしてもよいですか?
やさしくさする程度であれば、足が楽に感じる場合があります。
ただし、痛みや熱感、赤み、片側だけの強い腫れがある場合は、マッサージをせず、医療機関に相談してください。強く揉むことは避けましょう。
まとめ

妊娠中のむくみは、血液量の増加、ホルモンの変化、大きくなった子宮による血管の圧迫、同じ姿勢が続くことなどが関係して起こる場合があります。
日常生活では、足を少し高くして休む、横向きで休む、足首を軽く動かす、水分をこまめに摂る、締め付けの少ない衣類を選ぶなどの工夫が役立つことがあります。
一方で、急にむくみが強くなった、片足だけ腫れる、痛みや熱感がある、頭痛や目のチカチカを伴う場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
妊娠中の身体は日々変化します。無理のない範囲でケアを取り入れながら、不安があるときは相談先を持つことが大切です。
この記事は理学療法士監修のもと作成し、一般的な医療情報を提供することを目的としています。
症状や不安な点がある場合は、医療機関へ相談してください。
参考文献
- 「慢性疼痛診療ガイドライン」(監修:厚生労働省 慢性の痛み政策研究事業・2021年7月発行)
- 「エビデンスに基づく助産ガイドライン2024」(一般社団法人 日本助産学会・2024年11月発行)
- 「WHO推奨:ポジティブな産後体験のための母子のケア」(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所・2024年日本語訳発行)
- 「日本理学療法士協会」
- 「日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法学会」
Women’s PT Mediaでは、女性の健康に関わる理学療法士の知識やセルフケア情報を発信しています。関連する記事もぜひご覧ください。




