妊娠中の腰痛・肩こりに悩んでいませんか?
妊娠が進み、おなかが大きくなるにつれて、腰痛や肩こりが気になる方もいるかもしれません。
「立っていると腰がつらい」「背中や肩がこりやすい」「妊娠してから姿勢が変わった気がする」と感じることもあるでしょう。
妊娠中は、おなかの重みや身体の重心の変化によって、姿勢が変わりやすい時期です。姿勢の変化は、腰痛や肩こり、呼吸のしにくさなどに関係する場合があります。
この記事では、妊娠中に起こりやすい姿勢の変化と、腰痛・肩こりとの関係、自宅でできるセルフケアの考え方を、理学療法士の視点から分かりやすく解説します。
なお、骨盤の後ろ側にある仙腸関節まわりや、骨盤の横、お尻の奥に痛みや違和感が出る骨盤痛については、以下の記事も参考にしてください。
この記事で分かること
- 妊娠中に見られやすい2つの姿勢タイプ
- 姿勢と腰痛・肩こり・呼吸の関係
- タイプ別に意識したいセルフケア
- 理学療法士に相談できること
- 医療機関や専門家に相談した方がよい目安
まず知っておきたいこと
妊娠中は、おなかが大きくなることや体重の変化によって、身体の重心が変わりやすくなります。
その変化に合わせて、腰を反らせてバランスを取る方もいれば、骨盤が後ろに倒れやすくなる方もいます。どちらが良い・悪いということではなく、妊娠中の身体が変化に適応しようとする反応の1つです。
ただし、同じ姿勢が続くと、腰や肩、骨盤まわりに負担がかかることがあります。症状が軽い場合は、姿勢を見直したり、無理のない範囲で身体を動かしたりすることが、負担の軽減につながる場合があります。
一方で、痛みが強い場合や、しびれ・出血・強いおなかの張りなどがある場合は、自己判断で対応せず、医療機関や専門家に相談しましょう。
なぜ妊娠中は姿勢が変わるの?

妊娠が進むと、おなかが大きくなり、体重も少しずつ増えていきます。
それに合わせて、身体全体の重心が変化しやすくなります。重心とは、身体のバランスを取る中心のようなものです。
人は無意識のうちにバランスを取ろうとするため、おなかの重みを支えるために自然と姿勢が変わっていくといわれています。
たとえば、腰を反らせて立つことでバランスを取る方もいれば、骨盤を後ろに倒すような姿勢で支えようとする方もいます。
このような姿勢の変化は、多くの妊婦さんに起こりうる自然な変化です。ただし、姿勢の変化に身体がうまく対応しきれないと、腰痛や肩こり、骨盤まわりの違和感につながる場合があります。
妊娠中に見られやすい2つの姿勢タイプ
妊娠中の姿勢の変化には、いくつかの傾向があります。
ここでは、分かりやすくするために、代表的な2つのタイプに分けて説明します。
ただし、実際の姿勢は人によって異なります。どちらかに完全に当てはまる必要はなく、妊娠週数や体調によって変わることもあります。
腰が反りやすいタイプ|骨盤が前に傾きやすい姿勢
1つ目は、腰が反りやすくなるタイプです。
骨盤が前に傾く姿勢を「骨盤前傾」といいます。骨盤前傾は、骨盤が前に傾き、腰が反りやすくなる姿勢です。
妊娠中は、おなかが前に大きくなることで、腰を反らせてバランスを取ろうとすることがあります。
この姿勢が続くと、腰や背中の筋肉に負担がかかりやすくなります。また、腰を反らせる一方で、背中の上部が丸くなりやすい場合もあります。
このタイプでは、次のような不調を感じることがあります。
- 腰の痛み
- 背中の張り
- 肩こり
- 呼吸が浅く感じる
- 肋骨まわりの動かしにくさ
背中の上部が丸くなり、胸まわりが動きにくくなると、深く息を吸いにくくなる場合があります。その結果、首や肩まわりの筋肉に力が入りやすくなり、肩こりに関係することがあります。

腰の反りが少ないタイプ|骨盤が後ろに傾きやすい姿勢
2つ目は、腰の反りが少なくなりやすいタイプです。
骨盤が後ろに傾く姿勢を「骨盤後傾」といいます。骨盤後傾は、骨盤が後ろに倒れることで、腰の自然なカーブが少なくなり、背中全体が丸まりやすくなる姿勢です。
この姿勢では、骨盤まわりやおしりまわりに負担がかかることがあります。
また、ソファや座椅子など、座っている時間が長い場合や、背もたれにもたれる姿勢が続く場合にも、骨盤が後ろに倒れやすくなることがあります。
このタイプでは、次のような不調を感じることがあります。
- 腰の痛み
- おしりまわりの痛み
- 骨盤まわりの違和感
- 立ち上がりや歩き始めの痛み・つらさ
- 尿もれなど骨盤底筋に関わる不調
骨盤底筋は、骨盤の底で臓器を支える筋肉です。尿もれには、妊娠・出産による骨盤底筋への負担など、複数の要因が関係すると考えられています。
骨盤底筋については、以下の記事も参考にしてください。
姿勢だけが原因とは限りませんが、骨盤まわりの使い方や身体の支え方が、不調に関係する場合があります。
姿勢と腰痛・肩こり・呼吸の深い関係

腰や骨盤の姿勢の変化は、肩や呼吸とは関係がないように思えるかもしれません。
しかし、身体は全体でつながっているため、下半身や骨盤の姿勢が、背中・肩・首まわりにも影響することがあります。
たとえば、腰が反りやすくなると、バランスを取るために背中の上部が丸くなりやすい場合があります。背中が丸くなると、胸郭の動きが小さくなり、深い呼吸がしにくくなることがあります。
胸郭は、肋骨・胸骨・背骨でつくられる胸まわりの骨格です。呼吸や姿勢、肩まわりの動きに関係しています。
胸郭の動きにくくなると、首や肩まわりの筋肉に力が入りやすくなり、肩こりにつながる場合があります。
また、妊娠中は乳房が大きくなる変化もあり、上半身の重さのバランスも変わります。こうした複数の変化が重なることで、肩こりを感じやすくなると考えられています。
自分はどちらのタイプ?簡単なチェック
自分の姿勢傾向を知ることは、セルフケアを考えるうえで役立つ場合があります。
ただし、これは診断ではありません。厳密な判断は、医療機関や専門家に相談することが大切です。
日常生活の中で、次のような傾向がないかを確認してみましょう。
腰が反りやすいタイプに多い目安
- 立っていると、おなかを前に突き出す姿勢になりやすい
- 腰を反らせて立つ方が楽に感じる
- 長く立つと腰がつらくなりやすい
- 肩や背中の上部がこりやすい
腰の反りが少ないタイプにに多い目安
- 立っていると、おしりが下がったような姿勢になりやすい
- 座ると骨盤が後ろに倒れやすい
- 背中全体が丸まりやすい
- 立ち上がるときに腰やおしりまわりが気になる
どちらにも当てはまる場合もありますし、妊娠の時期や日によって違うこともあります。あくまで、自分の身体を知るための目安として捉えてください。
妊娠中の姿勢変化に対してできるセルフケア
妊娠中のセルフケアでは、無理をしないことが大切です。
おなかの張り、痛み、出血、めまい、息苦しさがある場合は中止しましょう。また、医師から運動制限を受けている場合は、事前に医療機関へ相談してください。
ここでは、姿勢タイプ別に意識したいセルフケアの考え方を紹介します。
腰が反りやすいタイプのセルフケア

腰が反りやすい方は、腰だけで身体を支えようとせず、胸まわりや肋骨まわりをやさしく動かすことを意識してみましょう。
胸まわりをやさしく伸ばす
壁や椅子を使い、胸の前側を軽く開くようにします。
強く反らせる必要はありません。呼吸を止めず、胸の前側が心地よく伸びる程度で行いましょう。
肩や腰に痛みが出る場合は、無理に続けないようにしてください。
肋骨まわりを意識して呼吸する
椅子に座り、背中を軽く伸ばします。
息を吸うときに、胸まわりや肋骨まわりがやさしく広がる感覚を意識します。吐くときは、肩の力を抜きましょう。
3〜5回ほど、無理のない範囲でゆっくり行います。
腹帯や骨盤ベルトを使う場合は締めつけすぎない
腹帯や骨盤ベルトを使うと、腰やおなかまわりが楽に感じる場合があります。
ただし、締めつけすぎると不快感につながることがあり、使う頻度や使い方には注意が必要です。骨盤ベルトはすき間に指が1〜2本入るスペースを保つことが目安です。
息苦しさや痛み、違和感がある場合は使用を中止し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
腰の反りが少ないタイプのセルフケア

腰の反りが少ない方は、骨盤が後ろに倒れすぎないように、座り方や立ち上がり方を見直すことが役立つ場合があります。
座るときの姿勢を見直す
椅子に座るときは、背中を丸めすぎず、骨盤を軽く起こすように意識してみましょう。
・足台などを利用し、足裏が足台につく高さに調整する
・背中や骨盤に、骨盤を起こせるようにクッションを置く
と、姿勢を保ちやすくなります。
背もたれに強くもたれかかり続けるよりも、途中で姿勢を変えることが大切です。
骨盤底筋をやさしく意識する
骨盤底筋は、骨盤の底で臓器を支える筋肉です。
息を止めずに、骨盤の底を軽く引き上げるような感覚を持ってみましょう。強く力を入れすぎる必要はありません。
力を入れることだけでなく、ゆるめることも大切です。痛みや違和感がある場合は、無理に行わないようにしましょう。
骨盤底筋トレーニングについては、以下の記事も参考にしてください。
長時間同じ姿勢を避ける
座りっぱなし、立ちっぱなしが続くと、腰や骨盤まわりに負担がかかりやすくなります。
こまめに姿勢を変えたり、短時間だけ歩いたりすることも、負担を減らす工夫の1つです。
どちらのタイプにも共通するセルフケア

姿勢タイプに関わらず、妊娠中は「同じ姿勢を長く続けないこと」と「ゆったりとした呼吸を意識して続けること」が大切です。
次のような工夫を取り入れてみましょう。
- 座る、立つ、歩くをこまめに切り替える
- 深い呼吸を意識する
- 腰や肩に痛みが出る動きは無理に続けない
- 寝る姿勢やクッション・足台などを活用する
小さな工夫でも、毎日の負担を軽くする助けになることがあります。
妊娠中の姿勢変化は産後にも影響することがある
妊娠中の姿勢のクセや身体の使い方は、産後の抱っこや授乳姿勢にも影響する場合があります。
たとえば、妊娠中から腰を反らせる姿勢が続いていると、産後の抱っこでも腰に負担がかかりやすくなることがあります。また、背中が丸まりやすい姿勢が続くと、授乳中の肩こりや首のこりにつながる場合もあります。
妊娠中から自分の姿勢傾向を知り、無理のない範囲でケアを続けることは、産後の身体づくりにもつながると考えられます。
産後のトラブルについては、こちらの記事も参考にしてください。
理学療法士に相談すると何ができる?

理学療法士は、姿勢や動き方を確認し、身体への負担を減らす方法を一緒に考える専門職です。
妊娠中の腰痛や肩こりは、姿勢だけでなく、筋肉の働き、骨盤まわりの負担、生活動作、休息の取り方など、複数の要素が関係することがあります。
理学療法士に相談すると、次のようなことを確認できます。
- 立ち姿勢や座り姿勢の傾向
- 歩き方や立ち上がり方
- 腰・骨盤・肩まわりの動き
- 呼吸や胸郭の動き
- 妊娠週数や体調に合わせたセルフケア
- 日常生活で負担が少ない姿勢や動作
- 腹帯や骨盤ベルトの使い方
妊娠中は、体調や妊娠経過によってできることが異なります。必要に応じて、医師や助産師と連携しながら進めることも大切です。
こんなときは医療機関や専門家に相談を
妊娠中の腰痛や肩こりはよく見られる不調の1つですが、症状によっては早めに相談した方がよい場合があります。
次のような場合は、自己判断でセルフケアを続けず、医療機関や専門家に相談しましょう。
- 腰痛や肩こりが強い
- おしりや脚にしびれがある
- 歩く、寝返りをする、立ち上がる動作がつらい
- おなかの張りが強い
- 出血がある
- 息苦しさやめまいがある
- 尿もれや骨盤まわりの違和感が強い
- セルフケアで症状が悪化する
- 日常生活に支障が出ている
不安があるときは、早めに相談することが安心につながります。
よくある質問

Q. 妊娠中に腰痛が起こりやすいのはなぜですか?
妊娠中は、おなかの重みや重心の変化によって、腰に負担がかかりやすくなることがあります。
また、姿勢の変化や筋肉の使い方の変化、骨盤まわりへの負担なども関係する場合があります。痛みが強い場合や長く続く場合は、医療機関や専門家に相談しましょう。
Q. 妊娠中の肩こりは姿勢と関係ありますか?
妊娠中の肩こりには、姿勢の変化が関係する場合があります。
おなかが大きくなることで背中が丸くなったり、胸郭の動きが小さくなったりすると、首や肩まわりの筋肉に力が入りやすくなることがあります。ただし、肩こりの原因は1つではないため、症状がつらい場合は相談しましょう。
Q. 妊娠中にストレッチをしてもよいですか?
体調が安定していて、医師から運動制限を受けていない場合は、無理のない範囲で軽いストレッチを行えることがあります。
ただし、おなかの張り、出血、痛み、めまい、息苦しさがある場合は中止してください。気になる場合は、事前に医療機関や専門家に相談しましょう。
Q. 妊娠中の腰痛は産後に治りますか?
産後に軽くなる場合もありますが、必ず自然に改善するとは限りません。
妊娠中の姿勢のクセや身体の使い方が、産後の抱っこや授乳姿勢に影響することもあります。痛みが続く場合は、早めに医療機関や専門家に相談することが大切です。
まとめ

妊娠中は、おなかの大きさや重心の変化によって、姿勢が変わりやすい時期です。
姿勢の変化には、腰が反りやすいタイプと、腰の反りが少ないタイプがあります。どちらが良い・悪いということではなく、身体が変化に適応しようとする反応の1つです。
ただし、同じ姿勢が続くと、腰痛や肩こり、骨盤まわりの違和感につながることがあります。
まずは自分の姿勢傾向を知り、無理のない範囲で姿勢を見直したり、呼吸や軽いセルフケアを取り入れたりしてみましょう。
痛みが強い場合や、しびれ・出血・強いおなかの張りなどがある場合は、自己判断せず、医療機関や専門家に相談することが大切です。
妊娠中の身体の変化を知ることは、不安を減らし、自分に合ったケアを見つけるきっかけになります。無理をせず、体調に合わせて少しずつ整えていきましょう。
この記事は理学療法士監修のもと作成し、一般的な医療情報を提供することを目的としています。
症状や不安な点がある場合は、医療機関へ相談してください。
参考文献
- 「慢性疼痛診療ガイドライン」(監修:厚生労働省 慢性の痛み政策研究事業・2021年7月発行)
- 「エビデンスに基づく助産ガイドライン2024」(一般社団法人 日本助産学会・2024年11月発行)
- 「WHO推奨:ポジティブな産後体験のための母子のケア」(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所・2024年日本語訳発行)
- 「日本理学療法士協会」
- 「日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法学会」
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