骨盤底ケアに取り組む理学療法士の現場

尿もれや骨盤まわりの不安定感——こうした悩みは「年齢のせい」「産後だから仕方ない」と、一人で抱え込んでいる方が少なくありません。でも実は、理学療法士がこうした悩みに関われることは、まだあまり知られていないのが現状です

今回は、骨盤底筋ケアや尿もれへの対応に専門的に取り組む理学療法士・山本 さやかさんに、現場で感じていることや、女性の体に寄り添うケアについてお話を伺いました。「恥ずかしいと思わなくていい」という言葉の背景にある、現場のリアルをお届けします。

女性ヘルスに関わるようになったきっかけ

理学療法士を目指したのは、祖母が脳卒中のリハビリを経て、少しずつ歩けるようになっていく姿を見たことがきっかけです。「人が回復していく過程に関わりたい」という気持ちが、この仕事を選んだ一番の理由でした。

最初は回復期病院で、脳卒中や骨折後のリハビリに関わっていました。骨盤底筋や女性ヘルスの領域に目が向いたのは、ある研修がきっかけです。骨盤底筋の機能と尿もれ、産後の不調との関係を学んだとき、「こんなに関わりが深いのに、なぜ理学療法士が関わっていることが知られていないんだろう」と強い違和感を覚えました。

その後、改めて臨床の現場を振り返ると、実は以前から骨盤底筋に関わる悩みを抱えた方と接していたことに気づきました。ただ、当時の自分にはその視点がなかっただけで。「あのとき、もっと力になれたかもしれない」という思いが、この領域を深く学ぶ動機になりました。

専門的に取り組むようになってから一番変わったのは、相談してくださる方の表情です。「こんなことを誰かに話せると思っていなかった」とおっしゃる方が多くて。その言葉が、この仕事を続ける力になっています。

現場ではどんな悩みを抱える方が多いです

最も多いのは、腹圧性尿もれです。くしゃみや咳、笑ったとき、重いものを持ち上げたときに漏れてしまうという相談です。産後の方だけでなく、40代・50代の方からも多く寄せられます。

次に多いのが、骨盤まわりの不安定感や違和感です。「なんとなくぐらぐらする感じがある」「座っているとお尻の奥が痛い」という方が多く、骨盤底筋の機能低下が関係していることがほとんどです。

来られる方の背景はさまざまですが、共通しているのは「相談するまでにかなり時間がかかっている」ことです。平均すると、症状が出てから1年以上経ってから来られる方が多い印象があります。「恥ずかしくて誰にも言えなかった」「病院に行くほどではないと思っていた」という方がほとんどです。

もっと知られてほしいと思うのは、尿もれは「我慢するもの」でも「年のせい」でもないということです。骨盤底筋の機能低下が関係していることが多く、適切なアプローチで改善につながる場合があります。一人で抱え込まずに、早めに相談してほしいと、現場で強く感じています。

女性の体のケアで大切にしていること

骨盤底筋のケアで一番大切にしているのは、「その方の感覚を一緒につかんでいくこと」です。骨盤底筋は目に見えない筋肉のため、「締めているつもりが、実はお尻や太ももに力が入っていた」ということがよく起こります。正しい感覚を無理なくつかんでもらうために、姿勢や呼吸の使い方から丁寧に確認しています。

よく誤解されていることとして、「骨盤底筋は締めれば締めるほどよい」という思い込みがあります。実際には、うまくゆるめられることも同じくらい大切です。力が入りすぎている状態では、かえって不調につながることもあります。「締める・ゆるめる」の両方をバランスよくできることが、骨盤底ケアの基本です。

一般的なリハビリと違う点は、デリケートな悩みに関わることが多いということです。だからこそ、「話してくれてよかった」と感じてもらえる関係づくりを、何より大切にしています。症状の改善だけでなく、「相談してよかった」と思ってもらえることが、ケアの出発点だと思っています。

社会の中で足りないと感じることは、尿もれや骨盤底の悩みを気軽に話せる場所が少ないことです。婦人科や泌尿器科に行くのはハードルが高い、でも誰かに相談したい——そのあいだに、理学療法士という選択肢があることをもっと広めていきたいと思っています。

理学療法士に相談できること

尿もれ、骨盤まわりの不安定感や痛み、骨盤底筋トレーニングの方法、産後の体の回復、姿勢のくずれ——こうした悩みは、理学療法士に相談できます。

「病院に行くほどではないかも」「婦人科か泌尿器科か迷っている」という方も、まず理学療法士に相談していただける場合があります。体の動きや筋肉のはたらきの視点から、何が関係しているかを一緒に整理できます。

相談のタイミングは、「気になったとき」が一番です。症状が軽いうちほど、対応の選択肢が広がることが多いです。産後すぐでも、数年経っていても、40代・50代以降でも、相談する意味はあります。

自己流でトレーニングを続けているけれど効果が感じにくい、という方にも役立てることがあります。正しい感覚でできているかを一緒に確認できるのが、理学療法士ならではの関わり方です。

この記事を読んでいる方へ

尿もれや骨盤まわりの悩みは、恥ずかしいことでも、我慢すべきことでもありません。

「誰にも言えずにいた」「ずっと一人で抱えていた」という方が、本当にたくさんいます。でも、話してみると「こんな方法があったんだ」「もっと早く来ればよかった」とおっしゃる方がほとんどです。

小さな違和感でも、「なにか変だな」と思ったら、ぜひ一度相談してみてください。あなたの悩みを、一緒に整理させてください。

プロフィール

山本 さやか|理学療法士

骨盤底筋ケアや尿もれへの理学療法的アプローチを中心に活動。
産前産後・更年期以降の女性への支援に幅広く携わっている。

東京都を中心に活動。

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本記事は取材をもとに編集部が構成しました。登場する人物名は仮名です。