産後、「お尻が垂れた気がする」「以前よりお尻が四角く見える気がする」と感じる方もいるかもしれません。
体重が戻っても、お尻の形や下半身のラインが以前と違うように感じることがあります。こうした変化には、体重や筋肉量だけでなく、妊娠中から産後にかけての姿勢の変化や、筋肉の使い方の変化が関係している場合があります。
この記事では、産後にお尻の形が変わりやすい理由と、日常生活でできるセルフケアについて、理学療法士の視点から分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 産後にお尻が垂れる・四角く見えやすい理由
- 妊娠中の姿勢変化とお尻の筋肉の関係
- 産後のお尻まわりにできるセルフケア
- 理学療法士に相談すると確認できること
- 医療機関や専門家に相談した方がよい目安
まず知っておきたいこと
産後のお尻の形の変化には、妊娠中の姿勢変化、大殿筋や中殿筋のはたらき、育児中の抱っこや歩き方などが関係することがあります。
大切なのは、筋肉量だけでなく、筋肉が使いやすい状態かどうか、姿勢や動作の中でお尻の筋肉がはたらいているかも確認することです。
症状が強くない場合は、姿勢の見直しや、呼吸と合わせた軽いセルフケア、歩き方の工夫が役立つことがあります。
ただし、腰痛や骨盤痛、しびれ、尿もれなどがある場合は、自己判断でトレーニングを続けず、医療機関や理学療法士などの専門家に相談しましょう。
産後にお尻が垂れる・四角く見えやすい理由

産後のお尻の形の変化は、単に筋肉量だけの問題ではありません。
妊娠中から産後にかけて、身体の重心や姿勢、骨盤まわりの状態、筋肉の使い方が変化することがあります。その結果、お尻の筋肉が使いにくくなったり、太ももや腰まわりの筋肉に頼りやすくなったりする場合があります。
お尻の丸みや横のラインには、大殿筋や中殿筋といった筋肉が関係しています。これらの筋肉がうまくはたらきにくくなると、お尻が平坦に見えたり、横に広がって四角く見えたりすることがあります。
考えられる理由は、主に3つあります。
原因1|妊娠中の姿勢変化でお尻の筋肉が使いにくくなる
妊娠中は、おなかが大きくなるにつれて、身体の重心が変化しやすくなります。
そのバランスを取るために、骨盤を前に倒し腰が反りやすくなる方や、骨盤を後ろに倒し背中が丸まりやすい姿勢になる方がいます。このような骨盤が前後に傾いた姿勢では、お尻の筋肉が働きにくくなることがあります。
どちらの姿勢にも共通するのは、「お尻の筋肉が使いにくい状態」が続きやすいことです。妊娠中の姿勢のクセに、産後の抱っこや授乳姿勢の影響が重なることで、産後も同じような使い方が続くことがあります。

原因2|大殿筋がはたらきにくくなる
大殿筋は、お尻の丸みをつくる大きな筋肉です。
歩く、立ち上がる、階段を上る、赤ちゃんを抱っこして立つなど、日常生活の多くの動作で使われています。
妊娠中から産後にかけて、歩くときの筋肉の使い方が変化することがあります。大殿筋が十分にはたらきにくい状態になると、股関節まわりの安定性が低下し、腰や太ももなど、ほかの部分で動きを補おうとする場合があります。
大殿筋は、骨盤を支える働きにも関係しています。骨盤まわりを支える力が低下すると、立つ・歩く・抱っこするなどの動作で、腰や骨盤まわりに負担を感じやすくなることがあります。
また、大殿筋は背中や体幹の筋肉ともつながりながら、身体を支える働きに関係しています。そのため、大殿筋がはたらきにくい状態が続くと、お尻だけでなく、体幹全体の安定性にも影響する場合があります。
こうした状態が続くと、お尻全体が平坦に見えたり、下がって見えたりする原因の1つになると考えられます。

原因3|中殿筋に負担がかかりやすくなる
中殿筋は、お尻の横側にある筋肉です。
片足で立つときや歩くときに、骨盤が左右に傾きすぎないように支える役割があります。
産後の生活では、赤ちゃんを片側の腕で抱っこしながら立つ、歩く、家事をするなど、左右どちらかに負担が偏りやすい動作が増えます。
このとき、中殿筋に負担がかかりやすくなることがあります。中殿筋がうまくはたらきにくい状態では、歩くときに骨盤が左右に揺れやすくなったり、お尻の横側が張って硬く感じたりする場合があります。
また、片側抱っこが続くと、片方の股関節や骨盤まわりに負担が偏ることもあります。その結果、お尻の横側が張り出して見えたり、全体の形が変わったように感じたりすることがあります。
お尻が四角く見える場合には、筋肉量だけでなく、お尻の横側のこわばりや、骨盤まわりの使い方も関係している場合があります。
産後のお尻まわりにできるセルフケア

産後のお尻の形の変化が気になる場合は、強い筋トレから始める必要はありません。
まずは、姿勢や呼吸、歩き方を見直しながら、お尻の筋肉を使いやすい状態に整えていくことが大切です。
痛みがある場合や、産後早期で体調に不安がある場合は、無理に行わないでください。産後の回復には個人差があります。気になる場合は、健診時に医師や助産師、理学療法士などに相談しましょう。
姿勢を見直す
まずは、座っているときの骨盤の位置を確認してみましょう。
背中が丸まり、骨盤が後ろに倒れた姿勢が続くと、お尻の筋肉に力が入りにくくなることがあります。
座るときは、坐骨で座面を感じるように意識してみましょう。坐骨は、座ったときに座面に触れるお尻の下の骨です。
骨盤が前や後ろに倒れすぎない位置を探すことで、お尻や体幹の筋肉がはたらきやすくなる場合があります。
おなかの深い筋肉と一緒に使う
お尻の筋肉だけを強く鍛えようとするのではなく、おなかや骨盤底筋と一緒に使う意識も大切です。
骨盤底筋は、骨盤の底で臓器を支える筋肉です。腹横筋は、おなかの深い位置にある筋肉です。
産後は、これらの筋肉がはたらきにくくなっている場合があります。息を吐きながら、骨盤底筋やおなかの奥をやさしく意識し、その流れでお尻に軽く力を入れてみましょう。
強く力を入れる必要はありません。痛みが出る場合や、息を止めてしまう場合は中止してください。

歩き方を少し意識する
歩くときに、後ろ足で軽く地面を押す意識を持つと、大殿筋を使いやすくなる場合があります。
大股で歩く必要はありません。いつもの歩幅で、後ろ足が地面から離れるときに、軽く押し出す感覚を意識してみましょう。
ただし、腰や骨盤まわりに痛みがある場合は、無理に歩き方を変えないようにしてください。違和感がある場合は、専門家に相談しましょう。
股関節まわりをやさしくストレッチする
お尻の深い部分には、梨状筋という筋肉があります。梨状筋は、股関節の動きや骨盤まわりの安定に関係する筋肉です。
妊娠中から産後にかけて、お尻の深い部分の筋肉がこわばりやすくなる場合があります。
痛みがない範囲で、お尻まわりをやさしく伸ばすストレッチを取り入れてみましょう。仰向けがつらい場合は、横向きや座った姿勢など、楽な姿勢で行う方法もあります。
腰や骨盤まわりに痛みがある場合は、無理に行わないでください。ストレッチで症状が強くなる場合は中止しましょう。
産後の運動については、こちらの記事も参考にしてください。
理学療法士に相談すると何ができる?

理学療法士は、姿勢や動き方を確認し、身体への負担を減らす方法を一緒に考える専門職です。
産後のお尻の形の変化には、筋肉量だけでなく、姿勢、歩き方、抱っこの仕方、骨盤底筋や腹横筋のはたらきなど、複数の要素が関係する場合があります。
理学療法士に相談すると、次のようなことを確認できます。
- 立ち姿勢や座り姿勢
- 歩き方や立ち上がり動作
- 大殿筋・中殿筋が使いやすい動き
- 骨盤底筋や腹横筋との連動
- 抱っこや授乳時の姿勢
- 生活に合わせたセルフケア
- 痛みが出にくい体の使い方
一人ひとりの身体の状態や生活背景に合わせて、無理なく続けられる方法を見つけることが大切です。
こんなときは医療機関や専門家に相談を
産後のお尻の形の変化そのものは、姿勢や筋肉の使い方を見直すことで、少しずつ変化につながる場合があります。
ただし、次のような症状がある場合は、自己判断でセルフケアを続けず、医療機関や専門家に相談しましょう。
- 腰痛や骨盤痛が強い
- おしりから脚にしびれがある
- 歩く、立ち上がる、階段を上る動作がつらい
- 尿もれや骨盤底の違和感がある
- 産後の回復に不安がある
- セルフケアで痛みが悪化する
- 左右差や違和感が強い
- 日常生活に支障が出ている
不安があるときは、早めに相談することが安心につながります。
よくある質問

Q. 産後のお尻の形は自然に戻りますか?
自然に変化していく場合もありますが、必ず元に戻るとは限りません。
産後のお尻の形には、体重だけでなく、姿勢や筋肉の使い方、抱っこや授乳などの日常動作が関係する場合があります。気になる場合は、無理のない範囲で姿勢や歩き方を見直すことから始めてみましょう。
Q. 産後のお尻トレーニングはいつからできますか?
産後の回復には個人差があるため、一律にいつからとは言い切れません。
まずは呼吸や骨盤底筋を意識する軽いケアから始め、体調や産後の経過をみながら少しずつ取り入れる方法があります。痛みや出血、不安がある場合は、医療機関や専門家に相談してから始めましょう。
Q. 骨盤ベルトでお尻の形は戻りますか?
骨盤ベルトは、骨盤まわりの安定を補助するために使われることがありますが、お尻の形を直接戻すものではありません。
必要に応じて骨盤ベルトを使いながら、姿勢や筋肉の使い方も合わせて見直すことが大切です。使い方や位置が不安な場合は、専門家に相談しましょう。
Q. 産後のお尻の横張りは何が原因ですか?
お尻の横張りには、中殿筋や股関節まわりの筋肉の使い方が関係する場合があります。
片側抱っこや、片足に体重をかける姿勢が続くと、左右どちらかに負担が偏りやすくなります。痛みや強い違和感がある場合は、自己判断でトレーニングを続けず相談しましょう。
まとめ

産後にお尻が垂れる、四角く見えると感じる背景には、妊娠中の姿勢変化や、大殿筋・中殿筋のはたらきが関係している場合があります。
体重や筋肉量だけでなく、筋肉の使い方や日常生活の姿勢も影響することがあります。
まずは、座り方や歩き方を見直し、呼吸やおなかの深い筋肉と合わせて、お尻の筋肉を使いやすくすることから始めてみましょう。
痛みやしびれ、尿もれ、骨盤まわりの違和感がある場合は、自己判断で続けず、医療機関や理学療法士などの専門家に相談することが大切です。
無理のない範囲で、今の身体に合ったケアを少しずつ取り入れていきましょう。
この記事は理学療法士監修のもと作成し、一般的な医療情報を提供することを目的としています。
症状や不安な点がある場合は、医療機関へ相談してください。
参考文献
- 「日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法学会」
- 「エビデンスに基づく助産ガイドライン2024」(一般社団法人 日本助産学会・2024年11月発行)
- 「WHO推奨:ポジティブな産後体験のための母子のケア」(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所・2024年日本語訳発行)
- 「慢性疼痛診療ガイドライン」(監修:厚生労働省 慢性の痛み政策研究事業・2021年7月発行)
Women’s PT Mediaでは、産後の体の変化やセルフケア、理学療法士の視点からみたウィメンズヘルス情報を発信しています。気になるテーマがある方は、関連する記事もぜひご覧ください。




